結論から書きます。金無垢の時計は、素材だけで見ても相当な価値を持っています。ただしその割合は、多くの人が思っているより小さい。

まず金の相場を置きます

2026年8月15日時点の数字です。

区分 純金(24K) 18K 相当
国際スポット(税抜) 22,320 円/g 16,740 円/g
税込換算 24,552 円/g 18,414 円/g
売却時の目安 24,061 円/g 18,046 円/g

為替は 159.49 円/USD、金のスポット価格は 4,352.81 ドル/toz です。

国内の店頭価格を見慣れている方は、スポットの数字が安く感じるはずです。田中貴金属などが表示しているのは税込かつ小売マージンを含む価格なので、スポットより1割ほど高くなります。比較するときは「税込換算」の行を見てください。

売却時の目安は、税込換算から買取スプレッドを2%引いた概算です。実際に手放したときに受け取れる水準に近いのはこちらです。

金無垢モデルの素材価値

18Kのケースとブレスレットで、金の使用量を仮に150gとします。ロレックスのデイデイトやデイトナの金無垢モデルは、ケースとブレス合わせてこの程度の重量帯に入ります。

18K 売却時の目安 18,046 円/g × 150g = 約 270万円

新品価格が1,000万円を超えるモデルであれば、素材価値は全体の3割弱ということになります。

ここから何が読めるか

素材価値は「下限」として機能します。ブランド価値が失われても、金の重さは残る。この意味で金無垢モデルには床がある。

ただし床は思ったより低い位置にあります。1,000万円の時計の床が270万円なら、残り730万円は時計としての価値です。そこが動けば、金相場が支えてくれる範囲は限られます。

私はここを誤解している人が多いと感じています。「金無垢だから安心」という言い方をよく聞きますが、正確には「安心なのは3割だけ」です。

ステンレスモデルとの比較

一方でステンレスのスポーツモデルには素材の床がほぼありません。デイトナ126500LNもサブマリーナ126610LNも、金属としての価値は数千円です。

にもかかわらず、ステンレスのデイトナはロレックスの中でも最も価格が堅い部類にあります。ロレックスの買取率は86.0%で、ブランド別に見ると突出しています。パテックフィリップの76.3%より10ポイント高く、オメガの57.1%とは29ポイントの差があります。

※ 買取率はGINZA RASINが公表した2022年時点の数値です。事業者の自社公表値なので割り引いて見る必要があります。

つまり価格を支えているのは素材ではなく、需要です。床がないのに落ちない。これがロレックスのスポーツモデルの特徴です。

為替を差し引くと何が残るか

円建ての価格を見るときは、いくらが為替の影響かを分けて考える必要があります。

いまの為替は159.49円です。仮に130円だった時期と比べると、ドル建てで同じ価格でも円建てでは23%高く見えます。金価格が上がったように見えても、その相当部分が円安によるものであれば、円で生活している人にとっての実質的な値上がりは見た目より小さい。

海外に売るなら話は別です。ただし国内で完結するなら、為替分は幻だと思っておいたほうがいい。

私はこう見ている

金無垢モデルを「素材の安心感」で選ぶなら、その安心は全体の3割程度だと理解しておくべきです。残り7割は時計としての評価で動きます。

逆に、ステンレスモデルを「素材価値がないから不安」と考える必要もありません。価格を支えているのは最初から需要であって、素材ではないからです。

どちらを選ぶかは好みですが、判断の根拠を素材に置くなら、その根拠がどこまで効くのかは数字で押さえておいたほうがいいと思います。


※ 貴金属相場は MetalpriceAPI から取得した国際スポット価格を円換算したものです。基準日 2026-08-15。 ※ 本記事の金額はすべて参考価格です。実際の売却額は実物確認のうえ決まります。