結論から書きます。時計を資産として見るなら、まず見るべきはブランド別の買取率です。

数字を置きます

販売価格に対して、買取価格が何パーセントかを示した数字です。

ブランド 買取率
ロレックス 86.0%
ヴァシュロン・コンスタンタン 80.6%
オーデマピゲ 80.5%
パテックフィリップ 76.3%
ウブロ 72.5%
チューダー 68.6%
グランドセイコー 65.9%
カルティエ 65.6%
IWC 58.6%
オメガ 57.1%

GINZA RASINが公表した2022年時点の数値です。事業者の自社公表値なので、そのまま鵜呑みにはできません。ただしブランド間の順序と差の大きさは、実務の感覚と大きくずれていないと考えています。

ロレックスの突出ぶり

86.0%という数字は、この表の中で明らかに浮いています。

2位のヴァシュロンとの差が5.4ポイント。パテックフィリップとの差は9.7ポイント。そして最下位のオメガとは29ポイント離れています。

100万円で買った時計を売るとき、ロレックスなら86万円、オメガなら57万円。同じ100万円でも、手放したときに残る額が29万円違うということです。

パテックがロレックスより低いのはなぜか

意外に思われるかもしれません。定価も中古相場もパテックのほうが高いのに、買取率では10ポイント負けています。

理由は流動性だと見ています。

パテックフィリップは1本あたりの単価が高く、買い手の母数が小さい。業者が在庫として抱える期間が長くなり、その分のリスクが買取価格に織り込まれます。ノーチラスのような一部の型番を除けば、売り切るまでの時間が読みにくい。

ロレックスは逆です。デイトナもサブマリーナもGMTマスターも、価格帯が数百万円で買い手が厚い。業者は仕入れてもすぐ回せるので、高く買っても成立します。

私が型番を見るときに値上がり率より先に流動性を見るのは、この構造があるからです。売れない資産は資産ではない。

グランドセイコーの65.9%をどう読むか

国産最上位のグランドセイコーが、チューダーより下、カルティエと同水準というのは、愛好家にとって面白くない数字だと思います。

ただしこれは時計の出来の話ではありません。中古市場での需要の話です。グランドセイコーは新品で買う人が多く、中古の流通量が相対的に少ない。買い手の絶対数も海外勢に比べると限られます。

裏を返せば、グランドセイコーは「売ることを前提にしない人」が買っているブランドだとも言えます。それは悪いことではありません。

買取率は何を意味しないか

この数字が高いことは「儲かる」を意味しません。「損しにくい」を意味します。

ロレックスの86%は、100万円で買って86万円で売れるということであって、100万円が120万円になるということではありません。値上がりは別の話です。

私は上昇余地より下値の堅さを見ますが、それは下値が堅ければ儲かるからではなく、判断を間違えたときの損が小さいからです。時計は現物なので、判断が外れたときに逃げるコストが株式より高い。だから最初から逃げやすいものを選ぶ。

どう使うか

同じ価格帯で迷ったとき、買取率の差はそのまま「間違えたときのコスト」の差になります。

たとえば100万円の予算で、ロレックスの中古か、オメガの新品かで迷ったとします。実用としてどちらが良いかは好みですが、資産として見れば29ポイントの差は無視できません。

もちろん、資産として見ない買い方も正当です。着けたいものを着ければいい。ただ、その判断を「資産だから」という理由で正当化するなら、数字は見ておいたほうがいいと思います。


※ 買取率はGINZA RASINが公表した2022年時点の数値です。事業者の自社公表値であり、実際の査定額は個体の状態・付属品・その時々の相場で変動します。 ※ 本記事の金額はすべて参考です。